熊野みち


平成二十九年、文化の日。
来たる、熊野川サイクリング・熊野古道ヒルクライムへの参加のために、(株) キナンの研修センターへ前日入りで準備をすることに。


準備とはいってもすでに、多くのスタッフの方々に道路清掃や運営設置などの環境を整えて下さっているので、自分らは移動するだけ。


秋晴れの七里御浜。


せっかく新宮まで来れるのだから、オフシーズンに突入したことでもあるし、少ない時間ではあるが新宮のスポットを見てまわろうと思い立つ。


ちょうど昼前に到着したので、腹ごしらえとしたい。
実は前から訪れてみたい店があって、熊野地域名物の”馴れ寿司-wikipedia”が頂けるお店なのだが、そこではなんと”三十年物”の馴れ寿司が頂けるという。
本音を言えば”怖いもの見たさ”というか、せっかく食すならば話のネタになる物を、といった好奇心から挑戦してみようと思った次第である。


噂の現場?は、「東宝茶屋」さん。
懐かしい匂いのする落ち着いた店内に訪いを入れると、ご主人が笑顔で快く迎えてくれる。
正直、敷居の高いお店だったらどうしようと、同伴していた雨乞に悟られぬようにドキドキしていて、密かにホッと安心した。
カウンターと座敷があって、座敷へ通していただく。


お品書きに目を通すと、目当ての馴れ寿司以外にも、眺めているだけで口内に涎が溢れてくる品々が揃っている。

あれもこれも食べてみたい、気持ちが揺れ動くのを我慢して馴れ寿司を注文する。
実はまだ馴れ寿司を食べたことがなかったので、好き嫌いが分かれると言われる馴れ寿司を、まずはノーマルな馴れ寿司から注文してみる。
元よりクセの強い食べ物が好きな自分。納豆、くさや、ロックフォール、マロワール...ドンと来いである。

今回は”鮎の馴れ寿司”と、熊野名物の”サンマの馴れ寿司”を頼む。
しかし、最近のニュースでも報道されているように、サンマの記録的な不漁で今年は”サンマの馴れ寿司”を作られていないとのこと。
その代わり、この”アマゴ”ならば特別に仕込んであると教えていただき、迷わずに注文。


鮎の馴れ寿司。
口に含むと、あの”鮎の香り”が鼻を抜けてくる。
そこに酸味が効き、鮎のフルーティな香りにアクセントがついて、想像していたよりも臭みがなくサッパリしている。
是非とも食前酒と共に、酒宴の前菜に頂きたい一品である。


アマゴの馴れ寿司。
アマゴは少し発酵した匂いが感じられるが、あまり強くはない。
しかし、弾力のある引き締まった身から噛むほどに旨みが染み出してきて、発酵臭も相まって病みつきになる旨さだ。
しんみりと、日本酒でちびちびやりたくなってくる。

馴れ寿司、これは俺の求める物に違いない。
そう確信して早速、「三十年物、お願いします。」


サンマ馴れ寿司、三十年。
もう、原型を留めていない。こちらも一味と醤油を垂らして戴く。


初めて見た人からすれば、ヨーグルトと見間違われるかもしれない。実際、そう遠くはないだろう。
箸で掬うと、辛うじてサンマの名残りと思しき欠片があった。


恐る恐る、箸の先で舐める。
正直、ゲテモノの類だと決めつけていた。
何しろ生の魚を加熱処理せずに、30年である。仕込まれた時には、自分はまだ産まれていないのである。

だが、そんな先入観など消し飛んでしまった。
口に含んだ瞬間に広がる、重厚で芳醇な香り。そして、いつまでも味わっていたくなる深い旨み。
キレのある酸味が後から効いてきて、口の中から後味が引いていく。
繊細で力強くも...儚い。
また、あの旨みを求めて箸が止まらない。もはや、スプーンで掬って口に頬張りたくなる。
酒にも合うだろうし、これだけで何杯も飯がいけそうだ。

これは決して奇をてらったキワモノではない。
むしろ熟練の職人の腕によって繊細に仕込まれた、もはや嗜好品の類であるといえるだろう。


腹も満たして次に向かったのは、2004年に世界遺産の一部としても登録された「熊野速玉大社」。
時間が迫っていて、駆け足で参拝する。


迫力の大鳥居は、神仏習合の名残りである「両部鳥居」。


閑静で木の香りが漂う、落ち着く雰囲気に包まれていた。




神門。


境内には世界遺産の石碑が。


拝殿には多くの参拝客。


そして、夕食には会長からお食事のお誘いを。
腹一杯になるほどのご馳走を戴き、明日からのイベントに備える。



初開催となった「熊野川サイクリング」。
熊野川町を起点として、新宮市と熊野市を巡るサイクリングイベントである。


キナンサイクリングチームがサポート。
和歌山県では、総延長800kmに及ぶ自転車道を整備するとのこと。
観光名所や関連施設を巡れる道順を、青いラインに沿って走ると分かりやすく巡れるという。
同時に自動車への注意喚起にも繋げたいとのこと。
サイクリングロードのご案内−和歌山県




熊野川町を抜ける赤木川を下り、


楊枝川へと進み、”布引の滝”へと目指す。



終盤に突如現れたつづら折れの峠道では、参加者が口を揃えて「まさか」と思われたそうな。
私もその一人に含まれている。


山肌を滑るように落ちる、布引の滝。


皆様とご一緒に。
紅葉には少し早かったか。
静穏たる滝を眺めていれば、息の上がり火照った身体が少しずつ、落ち着きを取り戻してくる。
山のひんやりとした空気を胸に吸い込む程に、身体の隅々へと新鮮な酸素が行きわたる。
感覚が冴え渡ってきて、内側から生気が湧いてくるようだ。



会長もご自身のロードバイクで走られた。
まさか会長とサイクリングができようとは、露にも思っていなかった。



来た道を折り返し、ゴールへと目指す。




ゴール後はバーベキュー大会。
もちろん、バーベキューのみの参加も受け付けている。



サポートライダーとしてお越しいただいた、森本誠選手と筧五郎選手のトークショーも開催。


明る日曜日、那智海水浴から標高922m(Bコースは阿弥陀寺 alt.568m)まで一気に駆け上がる、「熊野古道ヒルクライム」。



日の昇る前からの集合となり、とても冷え込んでいたが大勢の参加者に来場頂いた。


7:00、パレードがスタートする。


7:30。
大門坂へと到着したら、いよいよレーススタート。
スタートから熾烈な掛け合いが始まっている。


名瀑「那智の滝」を横目に熊野古道沿いを走るコースは、とても走りやすく、随所に絶景が広がる。


選手としての意地で上位ゴールした我々は、まだ戦いを続けている参加者の応援へと回る。
角口会長もご一緒に。



ラスト2kmからの林道はとても険しい。
一番キツいところでの応援は、最後のひと踏みの力となる。


下りは安全を第一に、サポートライダー・サポートカーが入ってペースを作る。


下山後は、昨日のバーベキューに代わってマグロの解体ショー。
来場者に無料で振る舞われた。


今日もトークショーを展開。
中島さんの司会は、見るひとを楽しませてくれる。凄い。


最後に皆さんと。
一緒に写って頂いたスタッフの方々には、本当に頭の上がらない感謝の気持ちでいっぱいだ。
我々の活動も、皆さんのお陰なくしてはとてもできるものではないということを忘れずに、常に感謝の気持ちで頑張りたい。
もらってばかりではなく、しっかりお返しもしなければ。


ありがとうございました。

コメント

  1. 熊野川サイクリング&熊野古道ヒルクライムお疲れ様でしたー٩( ᐛ )و
    前日にコース拝見しましたが、完走されるだけでもめちゃくちゃ凄い(特にラスト2kmの林道…)と思いつつ山頂で観戦しておりました
    んが、流石キナンの選手の方々…
    あっという間に続々と山頂にゴールされて驚きました!
    いや、普通に参加されていた方々も負けじとゴールに到達されて凄かったです!
    そして下山してからもあれやこれやと楽しませていただきました

    此方こそ主催者様はじめスタッフや有志のボランティアの方々、参加選手の皆様方に感謝です╰(*´︶`*)╯♡
    ありがとうございましたm(_ _)m

    あと、早なれ鮨は県全域で割とポピュラーですが、新宮市には三十年物のなれ鮨があるんですね!
    次の機会には是非食してみたいと思います
    ていうか椿選手、グルメリポーターになれるのでは…(*´∀`*)

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    1. 一個訂正します
      早なれ鮨、北部だけかも…
      勝手に県全域扱いしてしまった…

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    2. ありがとうございます。

      たくさんの方にお越し頂いて、こちらこそとても楽しかったです。
      ぜひ、来年はAコース完走に挑戦して下さい!

      今回戴いた馴れ寿司は、3週間ほどだったそうです。

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