人馬一体

ロードレースは体力勝負であり、機材スポーツでもある。

基本的には、体力があるヤツが強い。
だが、機材スポーツである以上、メーカーによって機材の性能や特色には幅があって、そこからアドバンテージを得たり失ったりすることは止むを得ない。
ゆえに、メーカー各社が製品の開発競争を繰り広げて、我々はその恩恵に与ることができる訳であるのだが。

自転車を構成するパーツの中で、タイヤほど酷使されるものはないだろう。
ライダーとバイクの重量を支え、駆動力を路面に伝え、風雨に晒され、石や凹凸などの障害物にも耐え抜き、バイクを進ませるために転がり続けなければならない。
尚且つ、路面とバイクを支える唯一のパーツとして、安全のために信頼できる性能が求められる。

なので、改めて言うことでもないかもしれないが、タイヤというのはバイクの中で最も重要なパーツのひとつなのである。

とはいうものの、タイヤのパフォーマンスと信頼性の両立は難しい。
転がり抵抗、グリップ力、軽量性、耐パンク性、乗り心地、耐久性...
あっちを立てればこっちが立たずで、妥協点というか折り合いというか、両方の性能を適切に保つバランスをどこにどのレベルで落とすかでタイヤの評価というのは変わってくる。

いくら軽くて速いタイヤでも、乗りづらくてすぐパンクしてしまうようなタイヤは、長時間に及ぶロードレースでは使いづらい。
逆にトレッドの減らないパンクしない頑丈なタイヤも、重くて数十wもロスするようなタイヤではレースでのパフォーマンスに影響を及ぼす。

走行中に様々な条件が複雑に絡み合うロードレース。
ともすれば、命に関わる重大な事故も起こりうる危険もあるスポーツである以上、パフォーマンス・信頼性に絶対の安心を預けられるタイヤを使いたい。


我々の走りと安全を支えてくれるのは、もちろんiRC TIRE


中でもクリンチャータイヤのASPITE PROシリーズは、レースでも使用できる性能を発揮する。
市場で最も普及しているクリンチャータイヤであるが、少し前までは練習用といった意味合いが強かった。

ところがASPITEは、クリンチャーのみならず、今までのロードバイクタイヤの性能の限界を打ち破る高いレベルで、パフォーマンスと信頼性のバランスを確保している。
今までであれば転がり抵抗、グリップ力、耐パンク性...など、それぞれの性能に特化したタイヤというのはあったと思うが、ASPITE PROは特化された性能をそれぞれ集めてひとつにしたような、飛び道具的にカッ飛んだ性能を発揮する。

中でもASPITEといえば、パンクしないでお馴染み。
本当に笑ってしまうレベルでパンクしない。
去年はレース・練習合わせて、マジで一回もパンクしなかった。

もちろん絶対パンクしないということはないのだが、その耐パンク性といったらない。

石やガラス片などがトレッド面に刺さってた、というのがよくあるだろう。
トレッドに異物が埋まって、少しずつ内部に入り込み、最終的にケーシングを破ってチューブに達する、というのがよくあるパンクなのだが、そういう異物を不思議と拾わないのである。

次にパンクで多いのがサイドカット。
サイドにはトレッドが無い分、小石などですぐに破れてしまうことが多い。
破れた箇所からチューブがプクーと出てきて、そこがパンクしてしまう。

ASPITEは、まぁサイドカットしない。
恐らく石か段差などでついたと思われる傷こそ入れど、タイヤサイドが切れるには至らない。


一番使用しているのは、ASPITE PRO RBCC
ASPITE PRO WETから名前が変更されたが、仕様に変更はないとのこと。


RBCCとは、米ぬかから作られた粒子を配合したiRC TIRE独自のコンパウンド。
トレッドが柔らかいコンパウンドなので、乗り味がかなり良い。
柔らかいコンパウンドなのだけれども、耐パンク性と耐久力を保ちながらトレッドを薄くできているので、乗り心地は良いのに走行感は軽いという不思議な乗り味。


以前は”WET”と名付けられていたように、その路面を掴むようなグリップ力はどんな路面状況でも安心できる。
落車が多発した全日本では、FULCRUM Racing ZEROにこのタイヤを使用した。
この絶対的なグリップ力から来る安心感は、雨天時のレースなどでは非常に心強い。
特に下りやコーナーでは、どのくらいタイヤを信頼できているか、というのは非常に大きなアドバンテージを生み出すから。

コーナーを攻めていても、限界が近づくと”ズルズル”とギリギリのところで粘るので、これ以上はヤバイなとコントロールができる。


トレッド面はV字のような細かい切り込み。
タイヤの水切り、面積あたりの接地圧をあげることで路面への食いつきに寄与している。

耐久性による長寿命も実現しているが、ひと月乗り込んでもコンパウンドの柔らかさが保たれるのはすごい。
時間を経たり風雨に晒されれば、ゴムはすぐに硬くなってしまうのだが、ASPITE PROは
ゴムの劣化による性能低下がかなり抑えられるので、乗り味の変化を感じない。


ASPITE PRO
ダイレクト感やシャキシャキ感が欲しい人は、ASPITE PROが良い感触を得られるはず。

軽くて長寿命、耐パンク性はRBCCと同じく。


スリックのセンター、サイドはヤスリのようにブロック点が。
スリックは転がり抵抗と耐摩耗に有効で、サイドのブロックは路面への食いつきとグリップ力の変化が感じ取りやすくなる。

RBCCにも言えることだが、耐パンク性を追求して使用されているケーシングは結構硬く感じる。
タイヤ全体としての剛性が高いので、ヨレや腰高感が無く、反応性が高い。
それだけだと乗り心地の悪くてピーキーなタイヤになりそうだが、ケーシングがしっかりしているからこそ、コンパウンドが本来の性能を発揮しているように感じる。


乗り味はとても癖のないニュートラルな走行感に感じる。
RBCCよりも硬めのコンパウンドなので、反応性はやや高く感じる。

そのコンパウンドの効果か、タイヤの転がる感じはRBCCよりも軽く感じる。
細かい路面状況も、ロードバイクらしくダイレクトに伝わる感じ。

RBCCと同様に、距離を乗り込んでもコンパウンドの柔らかさが保たれる。
かつ、トレッドの減りはRBCCよりも長寿命になる。


ASPITE PROとASPITE PRO RBCC。
どちらを選ぶべきかと言えば、これは好みの問題と言っても良さそうである。
とは言え、初めてならばどちらが良いか迷ってしまうだろう。

それぞれの特徴をまとめれば、ASPITE PROはレースにも対応できる走行感の軽さ、より長寿命。
RBCCは、どんな状況でも安心できる安定性・信頼性、より快適な乗り心地。
基本的な性能としては、どちらも非常に高いレベル。

騙されたと思って、いや、騙されることはないから、一度履いてみて欲しい。

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