リアディレイラーの役割

リアディレイラー(リアメカ、変速機...)には2つの役割があり、2つのバネが組み込まれている。


ひとつは名前にもなっている通り、ギア変速を行うこと。
そもそもディレイラー(derailer)とは”脱線器”のことで、非常時の列車をわざと脱線させるための装置である。
転じて、チェーンラインを外し、違うギアへ入れるこの装置も、ディレイラーと名付けられたようだ。


バネのひとつはチェーンラインを変更するための、横の動きのバネ。
リアディレイラーを見ると2つの滑車があると思うのだが、上部についているのが”ガイドプーリー”。
これは”チェーンをどのギアに入れるか”のチェーンラインを決めるためのプーリー(pulley:滑車)である。

そのプーリーをどの様に動かすか、であるが理屈は簡単。ワイヤーで引いて、位置を決めるだけ。
手元のブラケットのシフトレバーを操作すれば、「カチ、カチ」とギアの幅と合うように決められた分だけワイヤーが引かれ、ガイドプーリーが移動する。
反対に、ワイヤーをギアによって決められた分だけ開放して伸ばせば、伸びた分だけディレイラーのバネの力によってガイドプーリーが戻される。

汲み上げ式の井戸を想い描いてほしい。
手綱を1m繰り出せば、桶は重力に引かれて1m下に移動する。
逆に手綱を1m手繰り寄せれば、桶は1m引き上げられる。
手綱を固定すれば、重力と手綱の引力が釣り合って、桶はその場に留まる。
原理としてはそういうこと。

もうひとつは、チェーンの長さとテンションの適正化。
大きさの違うギアに変更することは、すなわち、必要となるチェーンの長さも変わるということ。
ギアを変える度にチェーンのコマ詰めなんかできないので、リアディレイラーがチェーンの長さを変えてくれるのだ。


そこで使われるのが、縦の動きのバネ。
今度は、ガイドプーリーの下部にある”テンションプーリー”が働く。
ギア径と必要になるチェーンの長さが変わる、とはどういうことか。


アウタートップに入れた場合。
青線がギア径、黄線が実際のチェーンライン、赤破線が必要なチェーンラインを表している。
本来なら赤破線の分だけチェーンの長さがあれば足りるのだが...


アウターロー(前を重く、後ろを軽く)にすると、使用する後ろのギア径が大きくなり、必要となるチェーンの長さも長くなったのがお分かりだろうか。
そして、必要になった分だけチェーンを伸ばさないといけないので、テンションプーリーの位置が前に移動して長さとテンションを適正に保ってくれる。


では今度は、インナートップ(前を軽く、後ろを重く)にするとどうなるか。
フロントギアは見て分かる通り、アウターとインナーの大きさの違いはかなりデカイ。
インナートップというのは一番ギア径の小さい組み合わせで、必要となるチェーンの長さも一番短い。
よって、リアディレイラーは一番たたみ込む様な形になり、チェーンの長さを詰めてテンションを作ろうとしている。