過去問 問1

人生で一番勉強していたのは、恐らく高校受験から高2の1学期くらいまでの間だろう。

希望校はちょっと頑張らないと入れない感じ、な公立の進学校を選んだ。
受かる為に、朝日が昇る前から寝る直前まで勉強していた。
当時はそこそこの大学に入って就職して...といった感じになるんだろうなぁ、と漠然と考えていた。
まさか高卒に、ましてやスポーツ選手になるなんて考えつきもしなかった。

しかし特にこれといってやりたい事や目標があった訳では無いのに、なぜわざわざ厳しい受験戦争に身を投じたかというと、全ては自転車の為であった。

小さい頃から自転車と共に遠出を繰り返していて(先の記事でも軽く触れたが)、中3のある夏の日に、高尾山へ1人遠出した時の事である。
当時もロードバイクという存在は認知していたが、特段興味があった訳ではなかった。むしろMTBに興味があり、その日も高尾山近辺の山道を自転車で駆け回っていた。
うだる暑さの下、そろそろ帰ろうかと20号の中央本線高架の日陰で休んでいると、ふと目の前から車列に混ざって走るローディーに気が付いた。

この狭い車道を自転車が走っていては車の迷惑ではなかろうかと、ぼんやりと眺めていて...む、車と並走しているではないか!
否、むしろ車を煽っている...!!

人生で数少ない、体に電撃が走る瞬間であった。人力だけであんなにも速く走れるものかと。それだけ衝撃であった。
いま思い返せば車のスリップストリームに入っていたのであろうが、兎にも角にもその日を境にロードバイクへとのめり込み、書籍やらネット情報やらを漁りまくった。

同時に「青の炎」という小説(読みやすくて面白かった)をたまたま読んでいて、その中でロードバイクがいかに軽くて速いかといった記述や気持ち良さそうにロードバイクに乗る情景が描かれており、それも手伝ってロードバイクに乗る妄想や期待がどんどん膨らみ、我慢できずにロードバイクが欲しい旨を親に相談をした。
高額であるが故に最初はもちろん却下されていたが、交渉の末、先の公立進学校に受かる事ができれば、私学への準備金との差額で入学祝いとして買っても良い、という権利?を獲得することに成功する。
更にその高校のすぐ裏には運命のいたずらか、プロショップ(後に足を向けて寝られないほどお世話になる)があって、もう毎日ショップに通えるじゃないかと、何が何でもそこへ入学する決意を固めたのであった。

そして合格発表で合格を確認し、真っ先に向かったのは親へ報告する為の公衆電話ではなく、すぐ裏のショップであった。もはや合格した事よりも、ロードバイクに乗れるという事の方が嬉しかったのである。
ショップの店員にはすでに、合格した暁には云々...の話をしていて、すぐにでも話をしに行きたいと思ったのであったが、昼からの営業のために引き返した次第であった。
そんなこんなでロードバイクを手に入れるのだが、あくまで”車と並走をしたい”というよくわからない目標を持っていて、レースに参戦するなぞ少しも考えてはいなかった。

当時の受験勉強は基本的にひたすら過去問を解いていき、英単語や暗記事項などプラスで必要と思われることを更に掘り下げて勉強するといった感じであったか。

過去の傾向から問題の予測をして、対策を考えることは非常に重要だ。
もちろん過去に起きたこと以外の問題が起きることも当然あるわけで、備えが偏らないようにいろいろな見方や対応力を準備していかなければならない。
受験の際も共通問題はもちろん、様々な学校の過去問を解いていた。

これはロードレースにも言えることで、目標としているレースのコースプロフィール等があればどの様な傾向で準備が必要であるか、ある程度の対策を立てることができる。そして、本番までにいろいろなレースや練習をこなしていき、脚を仕上げていくのだ。


我々の目標としているツールド熊野はほぼ、毎年同じコースで似たような展開になることが多いので対策を考えやすい。
先日のサイクルハウスミヤタでのセミナーと内容が被るが、どの様にレースまでアプローチをしていくべきか、少し考えてみたい。

ツールド熊野は0.7kmのプロローグで始まる。
3日間のショートステージが続くこの熊野においては、このプロローグでの差が結構響いてくるので、コンマ数秒でも稼いでおきたいところ。
だいたい過去のステージ優勝者のタイムは50~51秒で推移していて、総合上位陣となる選手達は53~55秒の間に順位をつけていることが多い。

その為にはもちろん、1分をもがききる脚を作っていかなければならない事がわかるのだが、パワーデータを見れば必要な強度や踏み方が見えてくる。


昨年のデータを見ると最大出力は1084w、平均出力は520wで、優勝タイムから5秒ビハインドの56秒で59位であった。
出力分布を簡単に書き出すとこの様な具合になり、強化すべき出力が自ずと判明してくる。


また、時間軸でみればどの様な踏み方をすればよいかの対策ができる。
コースは行って帰って来る往復のコースで、1箇所は完全に脚を止める鋭角コーナーがある。
つまり、単純に1分のもがききる能力よりも20秒のスプリントを2回連続で加速していく対策をしなければならない事がわかるだろう。
そして何よりここの鋭角コーナーであるが、このコーナー1つの突っ込みでかなりの差がつくので、コーナーの練習も必要だ。

そんなコースに欠かせないのが、高剛性なホイールだ。
ロードレースはコースプロフィールの特性によってホイールを履き替える、かなり面白い競技である。


プロローグに関してはスプリントの高出力を受け止めて、キレのある加速反応とスピードを維持する為に、スポークが短くて慣性がつく、FULCRUM  SPEED 55Tが最適であろう。



つづく

FULCRUM
ツールド熊野

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