過去問 問3

前回より

苦しみ抜いた初練習であったが、身体には心地よい疲労感が感じられ、初めて走った道路や長距離に嬉しくなっていた。

これを機に、地図をずっと眺めているのが趣味?というか癖?になった。冊子の地図を右に左に毎日何度も何時間もページが擦り切れるほど捲り漁り、どこを走ったか、まだ走っていない道はないか、この道にはどんな景色が広がっているのか、いろいろ想いを馳せながら眺めていた。
今でも隙あらばスマホの地図アプリをいじくり回して、より良い練習場所の開拓や効率の良いルートの開発に努めている。

微かに表記された農道1本たりとも見逃さんと刮目し、血眼になって走りやすそうな道を見つけ出し、いざ現地へ向かって期待以上の道であった時には、まるで宝物を見つけたかの様な気持ちになるのだ。
一度この感覚を覚えてしまうと身体が次の未踏の地を欲し始めるので、更に遠く険しい道を求め始める。いつか選手を辞めても、これだけは辞められる気がしない。
山中の人気のなく、路面がきれいで、雰囲気の良い峠に出逢った場合には、愛着が湧いて何回も通うようになり、暫く離れていると無性に走りたくなるという事がある。
15歳からそんな事をしていたものだから、八王子以西80kmに関しては自分より詳しい人はいないと自負している。

お気に入りの峠を見つけると、反復練習もそこで行うようになる。勝手の知っている道でもがく方が集中できて、自分の身体の調子もよく分かるようになるからだ。
山岳やアップダウンがあるレースを控えているならば、テーマを持って登りの練習をしたい。

ツールド熊野第2ステージ熊野山岳コースは、繰り返されるアップダウンと峠越えにより、短い距離ながらも過酷なステージ。
毎年実質的な総合優勝者がこのステージで決される、重要なステージとなる。

昨年の自分の動きは序盤の逃げに乗ること、もしくはエースを常に良い位置で展開させること。
後手を踏むと取り返しが効かないコースなので、ミスは許されない。


自転車ロード選手としての総合的な力が問われるコースだ。
鍵となるのは、丸山千枚田と札立峠におけるFTPが重要になってくる10分〜20分の強度だろう。5分前後の強度も強化したい。
また、激しいアップダウンによりほとんど平坦区間がないため、脚を休めている時間よりもペダルを踏んでいる時間が長いことが分かるだろう。
自分でFTP以上の強度で踏んでいる時間の合計がちょうど1時間であったので、それを目安に自分の不足部分や強化部分を把握して、トレーニングメニューを組むと良いだろう。強い選手はFTP以下で踏んでいる時間が長くなる、という事になる。
基本的に自転車ロード選手はFTPを上げる練習を重点的にしているので、このコースを意識した練習は結果的に他のステージやレースにも良い影響を与えるはず。

昨年の丸山千枚田1回目の登坂は、序盤のアタック合戦を終えた後に7'30"、366w(6.1w/kg)で集団前方でクリアした。逃げもあったために、ここでは集団はバラけず。
次にエース(今もチームメイトのトマの事だが)を前方に位置させて、札立峠に差し掛かる。
入りからペースが上がった集団先頭を維持していた{序盤の5分で376w(6.26w/kg)}が、脚もタレて後退。第2集団で頂上を越える。札立峠の記録は18'20"、330w(5.5w/kg)。

レースの展開としては、札立峠でかっ飛んで行った追走グループが逃げグループを捉えて、さらにそこから抜け出して逃げ切り。
自分はグルペットになった第2集団で、4'30"遅れでゴール。

気を付けたいのは、レース中に登坂している最中はペースは一定ではない。
タイムや自分の時間の最大出力に捉われていると、いざレースの時には集団から置いていかれる、もしくはうまいこと使われてしまうだけになってしまうので、速いペースの中でのインターバルの備えも必要だ。
いずれにしろ、最後は後ろをふりちぎって抜け出す脚は必要である。

自分が遅れをとった状況、どのくらい脚を使うとタレてしまうか、しっかりと把握されたい。
やはり、選手としての強さは一番弱い部分で決まるので、もちろん得意分野を鍛えて伸ばすことも大切だが、最初はしんどいがいつかは必ず改善されるはずなので、ちゃんと向き合って対処したい。


ほとんど登りっぱなしのこのコース。
装備したいのは、もちろんFULCRUM RACING LIGHT XLR tubular



軽さは武器だ。
軽いだけでなく、2to1スポークレシオとCULTのボールベアリングにより、高剛性と高い反応性を実現。

つづく

FULCRUM
ツールド熊野

問1
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